九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授 鵜林 尚靖
歴史は繰り返さないが,韻を踏む: ソフトウェア工学はどのような韻を踏むか?
歴史は繰り返さないが,韻を踏むーThe past does not repeat itself, but it rhymes.米国作家マーク・トウェインの言葉とされる.歴史において全く同じことは起きないが,似たようなことはよく起きるという意味である.ソフトウェア工学は,今までの古い技術が新しい技術に置き換えられることにより発展してきた.数学や物理学のような蓄積型の学問とは異なり,更新型の学問の側面が強い.その一方で,新しい技術に接したとき,以前見た技術を思い出すことが度々ある.ソフトウェア工学研究の関心がAI,機械学習,量子プログラミングなどに移りつつある現在においても,意外にも個々のアイデアの源流は伝統的なソフトウェア工学に宿っていることが少なくない.伝統的なソフトウェア工学の原理として,現実世界の把握,分割統治,抽象化,パターン化などがあるが,本講演では,これらを「ソフトウェア工学における韻」と捉え,これらの韻が現在に至るまでどのように踏まれて来たのか,さらには今後どのように踏まれて行きそうかを俯瞰する.ソフトウェア開発の現場では,現在,世代交代が進みつつあり,過去に生み出されてきたソフトウェア工学上の重要な考え方や手法が忘れられつつある.しかし,その本質的な概念は次世代にも受け継いで行かなければならない.本講演では,過去の重要なソフトウェア工学の本質を「韻」とみなし,これからのソフトウェア工学研究がどのような韻を踏んで行くべきかについて個人的な考えを紹介する.
1982年広島大学理学部数学科卒業.1999年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系博士課程修了.博士(学術).1982〜2003年(株)東芝に勤務.2003年九州工業大学情報工学部助教授,2010年九州大学大学院システム情報科学研究院教授.現在,副研究院長(教育担当).2003年度情報処理学会山下記念研究賞受賞.ソフトウェア工学,プログラミング言語モデルの研究に従事.日本ソフトウェア科学会,電子情報通信学会,ACM,IEEE-CS各会員.情報処理学会フェロー.
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